らっぱものがたり(その2)

カッパ研究家は語る。


まずわたしは、カッパは存在する、という前提で考えてみたわけです。
滝のうらがわなんかにきっといる。うようよいる。
だけどならどうしてカッパは、むかしばなしとかの伝説的なものの中にしかあらわれないのか。
これは、カッパがすごく小さいからだ!とわたしは考えました。カッパの大きさは、平均してミドリガメくらいなのだ。小さいとたまたま目撃されても、なにかの見間違いかも、なんて思われちゃいますからね。
でもそうすると、伝説とかにあらわれるカッパはどうなのだ、もうちょっと大きいじゃん、という話になりますな。
わたしはこれを、カッパの生態的な特徴のせいだ、と考えました。
つまり、カッパは本来すごく小さいんだけど、中にはたまにちょっと大きいのもいます、ということです。オカッパラッパなんかはその類いで、カッパの中では非常にめずらしいタイプなのでしょう。
どういったことかといいますと、カッパの頭にはお皿があります。カッパはここに、いい水を必要とします。でも水だけではダメで、カッパが長生きするためには、お日様の光も必要なわけです。お皿の中で水が、ほどよく増えたり減ったりすることが、カッパ長生きの秘訣なのです。長生きすると、カッパもすくすくと育ち、大きくなるわけです。
ところがほとんどのカッパは、そのことに気がついてさえいません。ただいい水を求めて、滝のうらがわのパラダイスであまりお日様の光も浴びずに日々をたのしく暮らしているので、奇跡的に長生きのカッパで30年、平均寿命8年という短命種になってしまっています。そもそもカッパには、長生きしたいという気持ち自体が希薄です。
ほかにもいくつか、カッパが見つかりにくい特徴があります。
まずカッパは、精神的ショックに極端によわいのです。びっくりするとすぐポックリと死んでしまいます。パラダイスからあまり出たがらないのは、このためです。
あとカッパは、死ぬとすごい速さで消滅します。化石が見つからないのは、このためです。人間に見つかっても、びっくりポックリですぐ消滅してしまうので、なおさら印象に残らない、というわけです。
なぜ消滅してしまうかというと、カッパがおいしいからです。しかも栄養満点なので、死んだとたんに微生物とかに骨まで分解されてしまいます。あらゆる生き物の大好物、カッパに捨てるとこなし、と動物料理王国食材大百科カッパの項にも記述されています。でも生きている間は猛毒があるので、ねらわれることはあまりありません。死にやすいけど天敵はいない、といったあんばいです。
こんな中でなにかの拍子で外の世界に出た、比較的精神的ショックにつよいカッパが、お皿の水のいいみちひきリズムを獲得してすくすくと育ち、伝説になるわけです。