たぶんまちがってる千年王国

悪魔くんの考える千年王国って、いったいどんなだろうと考えてみました。
何万年にひとりの大天才の考えることですから、それはとうていわたしなどの考えのおよぶところではないのですが、なにしろ不景気な世の中ですので、ポワーと妄想したりしてしまうのです。いけませんか。
貧乏や不幸のない世界というのは、やっぱりくじ引きシステムなんじゃないかなあ、とわたしは思うのです。貧富の差をなくすというからには、おそらくお金の価値はない世界でしょう。なにかを欲しいと思う人には、万人に平等のチャンスが与えられる。でもなにもかもが無限にあるわけじゃないので、くじ引きで決めるしかないでしょう。おそらくこういったシステムを作るために、何万年にひとりの大天才の頭脳が必要なんじゃないかな。あしたのゴハンは、ちょっと豪華に鯛のおかしら付きにしようかな、と思う。ライバルがいない場合はすんなり食べられるけど、希望者が多い場合にはくじで決める、みたいな感じ。お金はいらないのね。こういった、何をどの程度供給してどんなくじで決めるか、みたいなこまかくうまいシステムを作るには、やっぱり悪魔くんほどの頭脳が必要なんじゃないかなあ。
もちろんこういった社会に移行させていく力技も、悪魔を呼び出すほどの悪魔くんじゃないとむずかしいですねえ。いろいろ抵抗もありましょう。魔法の力も必要です。
わたしの予想では、悪魔くん不在の7年の間、ポマード頭の悪魔がどんどん勢力をのばし、経済的に世界の実権を握ります。世の中はポマード頭の私腹を肥やすためにあくせくはたらくというような、きびしい状況になっていくのです。そこで悪魔くん復活です。あの世を克服するほどの力をつけて帰ってきますから、「だてにあの世は見てねえぜ!」とかいうかもしれません。年齢的には中学生になっていますからね。まあ小学2年でサタンとどうどうとわたりあった悪魔くんですので、あの世がえりの中学生ともなると、かんたんに八仙からソロモンの笛とか奪い返して、ポマード頭をぎゃふんといわせましょう。これでもう、悪魔くんは世界の頂点に立ちます。ポマード頭にしぼられてきた世界の人たちは、メシヤメシヤとおおよろこびです。あとは、バブリーな夢を捨てきれないリッチな人たちと、魔法大戦です。敵の影にはスフィンクスとか、インピ界の巨人たちが暗躍していますから。でも敵はしょせん、過去に呼び出された悪魔の成れの果てとかなので、呼ばれもしないのに自力で復活しちゃう悪魔くんにかなうはずがないです。

こうして悪魔くん千年王国は、建国されます。なにもかも、奥軽井沢で蛙男と相談していたころからの、悪魔くんの計画通りです。
どうでしょうか、千年王国は、暮らしやすいかなあ。お金の価値がなくなると、ひとびとはどんなモチベーションで生きていくんだろう。最初のうちは魔法の力と、富の集中がなくなるおかげで、多少世の中の物資はゆたかにまわります。なにしろほうきで移動できたりする可能性もあるので、化石資源のエネルギー問題も一息つけます。だけどいくらはたらいてももうかるわけじゃないので、そういったモチベーションに代わる何かが必要になってくるかなあ。
たとえば、いい学校に行きたいとします。くじ引きです。いや、これは試験かな。希望の仕事があるとします。くじ引き?これも試験や面接でいいか。すごいダイヤモンドを手にしたい、とかはくじ引き。大きな家に住みたいと思ったら、家族構成なども考慮してくじ引き。ふつうの家なら安定して住めるけど、大きな家とか豪華な家は希望が多くて、くじに勝ち続けないとずっと住めないです。でも仕事とかのよんどころない事情とかも考慮に入るかもしれないなあ。身にあった環境は維持しやすいシステムなのかも。官僚の腐敗とかは、この辺に入り込む余地がありそうです。よんどころない事情の特別扱いとかで。でもそういったずるをしてももうかるわけじゃないので、腐敗にいたるモチベーションも低くなるかもしれませんね。
はたらかなくても食べていけるけど、くじを引けるチャンスが少なくなるのかもしれないですな。いろんなくじを引きたい、というのがモチベーションになるかも。すると、はたらくとくじ引換券がもらえるのかな。お金じゃん、それ!
だれでもやる気があればいろんなくじをいっぱい引ける世の中。実力があればいい暮らしを維持できることもある世の中。くじ運がよければばら色の人生。やる気がなくてもこじんまりと食べていける世界。
千年王国、わりといいかも。とくに、やる気がなくてもこじんまりと食べていけるところが。